結論から言うと、1ヶ月で虫歯はできるときもあります。今回の虫歯に関しては、歯の表面のエナメル質の中に脱灰という歯の表面を溶かした虫歯予備軍のものが元々あった可能性があります。その場合、1ヶ月以内に虫歯が進行することは十分考えられます。
脱灰とは、むし歯の原因であるミュータンス菌が食べ物中の糖分を餌に作る酸が歯のカルシウムやリンなどのミネラル分を溶かすことを言い、程度がひどくなると歯が白く濁り、光沢を失います。
このような歯に穴が空く一歩手前の状態は虫歯の前段階になり、この時はまだ歯医者さんに行って、削って治療しなくてもいい段階です。脱灰しても口の中の唾液が、溶け出したカルシウムやリンを歯の表面に戻す働きをしてくれるのです。これを再石灰化といいます。
歯磨きや、歯と歯の間のフロス(糸ようじ)を通すなどの毎日のお手入れで再石灰化を促せば、自然治癒もしくは現状維持が可能です。
しかし、脱灰の状態が続くと、「穴があくくらいの虫歯」になってしまいます。
脱灰自体は最初のうちは白くなるものなので、ぱっと見ただけだと分かりづらく、レントゲン上もはっきり写ってこないものが多いです。
1ヶ月前の検診の際には白く脱灰していた部分があり、1ヶ月の間に磨き残しが溜まりやすい状態の場所であったならば虫歯へと進行していき穴があく可能性は高いと考えられます。
また、その場合、表面のエナメル質だけの虫歯や象牙質まで進んでいても浅い虫歯の状態であれば、1週間ほどおいても虫歯の進行度は低いと考えられるので特に問題はないかと思います。
全く症状がなく、見た目上は問題がなさそうに見える歯でも、レントゲンを撮ってみて初めて虫歯がわかる場合や、レントゲン上は銀歯が白く映るせいで虫歯が写ってこなくてわかりにくい場合などもあります。
この写真は一見何ともなさそうです。矢印の部分が少し茶色いかなと感じるくらいです。しかし、レントゲンを撮ってみると、中で虫歯が広がっていました。
歯と歯の間の部分から虫歯が広がっていたケースになります。
歯と歯の間の虫歯は、一見穴になっていないので中々患者様ご本人は気づきにくいケースが多く、我々歯科医から見てもレントゲンを撮影しないと診断しづらいことも多いのです。
上と同じケースですが、中を開けてみるとこんなに虫歯が広がっていました。 表面上は歯の形がしっかりしていても、意外と中で虫歯が大きくなっていることが多いのが、歯と歯の間の虫歯の特徴になります。
右は虫歯を取りきって、歯型をとり、新しくセラミックの詰め物を入れた写真になります。
また、レントゲンの撮る角度によって、虫歯が見つかる場合もあります。下の写真は右下の同じ部分を同じ日に撮影しています。
左では歯が重なって見つからなかった虫歯が、撮る角度を変えたことではっきりとわかりました。右の写真の丸で囲んだ中に黒くなっているのが虫歯です。
歯同士が重なったレントゲンなどでは虫歯がわかりにくい事が多いため、当院では歯と歯の間の虫歯がないか、見つけやすい角度で部分的なレントゲンを撮らせていただき診断します。
クリーニングだけでは虫歯を完全に予防することはできません。何故なら定期検診で歯医者さんにいらっしゃるのは3ヶ月に一度だとしても、年に4回しかありません。
99%は患者様ご自身によるセルフケアになります。但し、定期検診によりレントゲン写真などを撮ることにより、虫歯の早期発見早期治療を行うことで重症化させないことは可能です。
是非、定期検診を受け、定期的にレントゲン写真を撮影して重症化させいようにしましょう。